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2010年6月 9日

パロディについて

■先日、あるラジオ番組にコメディ界のベテラン俳優さんが出ておられて、現代が『パロディの成立しにくい時代』だと嘆いておられました■なるほど、そうかもしれません。パロディというのは一般に、ある先行作品のスタイルや内容を真似しつつ、中身を面白く作り変えたもの。単に洒落ていたり面白ければいい、というジャンルもあれば、必ず批評・風刺の精神に基づいていなければ、という考え方もありますが、まぁそこに話を突っ込むと芸術論なっちゃうのでさておき・・・いずれにせよパロディを楽しむために必須なのは元ネタに関する知識です■そう云えば、僕が子供の頃のテレビのお笑い番組には、『金色夜叉』、『君の名は』、『忠臣蔵』など、小説、映画、舞台などで有名な作品のパロディコントが氾濫していました。今、これらのコントが若い人に受け入れられるでしょうか?面白い・面白くない以前に、前提となる知識が共有されていないため、作品として成立しえないのではないでしょうか?■さて、「漫才の神様」的存在、夢路いとし・喜味こいしのご両人には、繰り返し演じられた数多くの名作漫才があります。いくつかその題名を拾ってみると、おなじみの『お笑い交通巡査』などに混じって、『ファーストフード初体験』、『我が家の湾岸戦争』、『地球にやさしい男』など、大御所になっても時事ネタや社会現象を扱ったネタに挑戦し続けてこられたお二人の姿勢に頭が下がるわけなのですが...■今日注目してみたいのはそこではなくて、『恋愛勧進帳』、『ぽんぽん講談』などの作品です。前者は歌舞伎十八番の一つ『勧進帳』を下敷きにしたネタ、後者は、講談『曽我物語』の語りと、合間に入る張り扇(ぽんぽん)の掛け合いで大爆笑必至の漫才です。つまり、数十年前まで日本では、"大衆"芸能の極ともいえる漫才で、歌舞伎や講談のパロディが受け入れられたということです■いとこい先生といえば、もっとすごい体験があります■7、8年前でしょうか、僕を含むチームで、蜷川幸雄演出『ハムレット』の舞台のメイキング番組を作ることになったのです。『うーん、メイキングだけじゃ持たないしなあ・・・今の人はハムレットって云ったって題名は知ってても中身はなかなか知らないだろうし、ストーリー説明をなにか面白い方法で出来ないかなあ・・・?』と考えた僕たちは、会議の結果(たしか主に僕の意見で)、落語、狂言、漫才という3つの上方芸能のプロフェッショナルにお願いして、3分割で『ハムレット』のストーリーを面白おかしく概説してもらう!、という暴挙に出たのです■落語は桂小米朝(現・米團治)さん、狂言は茂山家若手の皆さん、そして漫才は夢路いとし・喜味こいしのご両人。この試みが番組的に成功したかはともかく(汗)、驚いたのは、僕が打合せのためにいとこい先生の楽屋を訪れたときのこと・・・

僕   『実は、ハムレットを漫才でやっていただきたいんですが...』

こいし 『それやったら昔、僕らやってたで』

僕 『え!?』・・・その後こいし先生は、身振り手振りつきで、「俺が、『おのれレアティーズ!』とこうやったら、兄貴がこうきてナ・・・」などと、かつての持ちネタ『お笑いハムレット』(?)のさわりを披露してくださったのです。最後はハム(レット)と敵役の(レア)チーズの洒落で落とすようなハナシだったんですが・・・■つまり驚愕したのはこういうことです。かつての日本人、それも一部のインテリ層ではなく漫才を愛するごく普通の庶民は、歌舞伎や講談の名作同様、シェイクスピアの代表作のあらすじと主要登場人物くらいは知ってた!少なくともそれ前提でパロディ漫才が作れた!ということなんです■(この項続く...艦長)

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